一橋MBAに合格しました
一橋大学大学院金融戦略・経営財務プログラムに合格しました。
春から社会人大学院生として仮想通貨に関連した研究をしながら経営学修士(MBA)の取得を目指す予定です。なお、私が現在考えている手法では大規模な計算が必要であることが予想されるため、大学院生が研究用途で使える無料ないし低コストの計算資源に心当たりがあればぜひ教えていただきたいです(マイニングしたいわけではありませんのでご安心ください)。
今回畑違いの分野の大学院受験をする中で、多くの方に相談に乗っていただき知恵をお借りしました。それに対する恩返しというには小さいかもしれませんが、今回私がどのように受験の準備をしたかをここで共有することで、本プログラムを受験する方の参考となることを願っています。
今回私がMBA取得を目指す理由は大きく三つあります。一つは将来的に起業するため、二つにエンジニアとしてドメイン知識を広げるため、そして最後にアカデミックな興味のためです。一橋大学の本プログラムは金融、経営学一般の講義と併せてデータの分析を元に判断する力を養うことを重視したカリキュラムを提供しており、またアカデミックな成果のある教員が多く所属しています。これらの特徴が私の希望と合致していることから本プログラムを進学先として選びました。
本プログラムは秋期、冬期の2回選考がありますが、私は昨年11月末にMBA取得を目指すことを決めたため必然的に冬期の選考を受験することになりました。例年秋期のほうが枠が多く、相談に乗っていただいた教員の方も「冬期は難しいよ〜」と笑っておられたので、受かる確率を少しでも上げたい場合は秋期を狙うと良いようです。
スケジュール
本プログラムは研究計画書による一次試験、そして面接による二次試験があります。以下にスケジュールを示します。
12/14 入試説明会
1/4-1/13 出願期間
2/3 一次試験の合否発表
2/12 二次試験
2/20 最終的な合否発表
一次試験について
一次試験では研究計画書が合否を左右します。このため、研究計画書は可能な限り良いものを書く必要があります。
例年、一次試験の前に入試説明会が開催されているようなので参加されることを強くお勧めします。私が参加した説明会はZoom上で行われ、教員の方に選考基準など非常に重要な情報を詳細に説明していただきました。また匿名での質問も気軽に行うことができました。当時の私のメモを共有します。
計画書について: - 新しさや面白さも重要だけど、「2年間で実現可能な計画」であること! - 夢ではなくて「計画」。実現可能かどうかが一番重要 - どのような調査、検討、勉強をしているか。これが見られる - 勉強できること、の範囲で収まっているかが重要(自分へのメモ:シラバスなどで見られそう) - 特定の企業やデータに基づくというよりは、汎的な手法のほうが指導しやすい(自分へのメモ:つまりそうあれ) - 修論を書く、というのを意識したものにしてほしい 計画書の評価: - 書類審査に重要。一次は計画書に書いてあることがすべて - 論文書けそうかな?という観点で見る - ポテンシャルを感じさせてくれ。 - 変に背伸びしてるな?というのは…。入門書しか目を通してないのかな…?みたいなのは落ちます。 - これはわかる、これはわからないの基準をきちんと設けてくれればいい。 - 英語の論文も読んでいるとかは重要。ただし本当に読んだかの確認はしますよ! - 理解できている水準で書いてもらえればいい。 - 英語のスコアや成績だったりも加味するけど、勉強したいという熱意が感じられるかが重要 - 「ちゃんと考えて、調べて勉強して、自分の強いところ弱いところを示して、それで何ができるかを書いてもらえれば。努力の跡が分かればよい」 出願時のコツ: - 「私は募集要項を満たしている!」ということを示せるように作る - 周りに見てもらう - 今後どうしていきたいか、キャリアについても考えておく - 読めない論文については国立図書館に行って論文を読んだりするといいかも 出願者の傾向: - 秋3倍、冬3-4倍 - 金融が3ー5割、ほか事業、商社、コンサル、ベンチャーさまざま。外国1割くらい。 - 「こういう業種に勤めているけど大丈夫?」→ 大丈夫。不利になることはない。
この説明会の情報をまとめると、一次試験はざっくり言って「あなたがどれだけ努力(準備)できるか、そして努力の方向性を知っているかを見せてくれ」という試験と言えそうでした。また所属する企業によって選考の合否が左右されるといったことはなく、あくまでMBAに通うことに苦言を呈されたり講義に出席できなくなったりしないかの確認程度のようでした。
さて、上の選考基準からもわかるように一橋大学は論文を書かせることを強く意識しています。このため、私は論文が書けます!ということをアピールする研究計画書を作成する必要があります。
良い論文を書くために必要なのは良いテーマですが、良いテーマを考えるためにはその業界のドメイン知識、例えば人々が何について関心を持っているか、どういった問題に悩んでいるのかを知っておく必要があります。
しかしながら、私は金融については知識が全くなく、どういった研究がなされているのかすらわからないという状態からのスタートでしたので、書店に行って経済、経営学部の大学生向けの書籍を探し、一日で読めるものを何冊か読むことで基本的な単語や概念の習熟に努めました。また最新の研究にキャッチアップするため、The Journal of Financeといったトップジャーナルの受賞論文などを中心に一日1から2本のペースで読みました。計画書を書くまでに26本をざっと読み、そのうち13本を精読しました。論文の管理にはNotionを利用しました。私は主に通勤時間を利用してこれらの準備を行いました。また、夜寝る前に友人らに論文の内容を共有することを意識し、論文読みを習慣づけました。
仮想通貨にテーマを固めたのは12/28です。ある友人が「仮想通貨ではこんな現象があるんだよね」とたまたま持ってきてくれた雑談のネタを膨らませたものがベースになりました。仮想通貨についてもざっくりとした理解しかしていなかったため、テーマが決まったあとの年末年始は仮想通貨関連の論文や書籍、ノードのリファレンス実装を読んで過ごしました。
研究計画書を実際に書き始めたのは1/11の夜からです。どの程度仮想通貨の技術的な面に踏み込んで記述するかで迷走してしまい、第一稿を読んだ研究者の友人には「こんな辞書みたいな研究計画書は初めて見た」と言われ、1/12の夜から書き直しを行いました。技術的に正しくあろうとして詳細に書きすぎた結果テーマ自体がぼやけてしまうのでは本末転倒だと考えなおし、審査員に技術面で疑問を持たれた場合は口頭で説明すればよいと割り切って、ほぼすべての技術的な内容を削りました。結果的に自身の興味や検討している手法について簡潔に伝えられる文章になったと考えています。研究計画書については複数の友人に目を通してもらうことが非常に重要だと実感しました。
一次試験の結果は2/3ごろに郵送で届きました。
なお、一橋大学は研究計画書とともに志望動機なども併せて送る必要があるのですが、その中の質問で下記のようなものもあり興味深かったです。この質問の意図については入学後に聞いてみようと思います。
*Q4.音楽、絵画、彫刻、建築、文学、哲学、スポーツなど、あなたが興味を持ち、評価するも のがあれば、簡潔に記してください。(400 字以内)
二次試験について
二次試験に関しては特別な準備はせず、自分の計画書や引用した論文を読み直し、それらを簡単に要約できるようにしておいたくらいです。私の解決したい問題に対して別のアプローチがあるのではないかと犯罪捜査系のジャーナルを読んでみたりはしましたが、特に有益な情報は得られませんでした。なお、これに関しては先行研究を網羅的に調べたかといった観点での質問があった場合には有効な対策だったかもしれません。
二次試験の面接時間は15-20分程度で、希望する指導教員と、分野的に近い教員の2名に面接していただきました。終始穏やかで、圧迫を感じるような質問や態度は感じられませんでした。むしろ私の言葉足らずな点を補完していただいたような感覚でした。
質問は下記のようなものでした。
名前と受験番号を。 研究計画書の内容を要約して。 XXXというデータが必要のようだが、それはどのように取得するのか。 本プログラムに期待することは。 志望理由からジェネラルな経営学が学べる大学院の方が適しているかもしれないがなぜ一橋大学を選んだのか。 研究を広げてXXXについても考慮して良いと思うがどうか。 人文系の学問は理系のアプローチとは大きく異なるがどう考えるか。 家が遠いが通学可能か。
これらの質問には、研究計画書を本当に本人が書いたのか、先行研究は十分に理解して引用しているのか、ミスマッチが起きないかという点を確認する意図が見受けられました。また、研究を広げてみてはどうかという質問については2年間で終わらせるのはあまり現実的ではないサイズの拡張でしたので、タスクの大きさを把握できているのかを判断する意図もあったのかもしれません。面接の最後に「先行研究もよく調べてあるし、計画書も問題ないですね。」とおっしゃっていただけたので報われました。
今後について
金融、経営学といういままで接点のなかった分野を体系的に学べる貴重な経験を楽しみにしています。またNAIST時代の心残りとしてジャーナルという形で成果が出せなかったというものがあり、一橋大学では絶対にジャーナルを出したいです。
金融、経営学の論文を表層だけ掬った者の感覚として、この分野にはまだまだ情報科学の手法が浸透しておらず、情報科学を持ち込むことで業界にそれなりの貢献ができそうだと感じました。また、扱うテーマもかなり多様で、現実世界と繋がった莫大なデータを扱える点は金融、経営学ならではの楽しみだと思います。この分野楽しいよ!おいでよ!と自信を持って人を誘えるようになれるよう精進していきたいと思います。
謝辞
今回の受験でも、様々な方にご協力いただきました。この場で感謝を述べさせていただきます。
- お忙しい中推薦状を用意してくださった中村教授
- 突然のDMでの相談に乗っていただいたSさん
- 夜な夜なの論文読み雑談に付き合ってくれた友人Y
- 計画書絶句太郎の友人M